トンイ考2 チャン・ヒビンとの戦い

トンイ考2 チャン・ヒビンとの戦いはトンイ考の後続サイトです。韓国時代劇トンイについて歴史的背景などを考察します。

トンイ第1話 設定と用語解説(あらすじ含む)

      2013/12/08

[ad#300-250]ハン・ヒョジュ、チ・ジニ主演、イ・ソヨン、ペ・スビン、パク・ハソン出演の韓国時代劇トンイ(同伊:동이)の第1話の解説(あらすじ含む・ネタバレあり)です。

何度も見ているのに見る度に発見があります。

逆に過去の自分の勉強不足とリサーチ不足に猛反省です(汗)

さて、今回、韓国の公式サイトのキャスト・登場人物設定を見て新たに気がついたことがありました。(日本の公式サイトは端折り過ぎですね~。当サイトの看板バナー下に3つに分けてキャスト紹介をしていますので、そちらを参照して下さい!)

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トンイ役のキム・ユジョン、当時も売れっ子でしたが、現在は超売れっ子に!

 

トンイの父でドラマ内では検視を行う仵作人(オジャギン:오작인)として登場します。彼の家門は本来は両班(ヤンバン)出身なのですが、祖父が昭顕世子(ソヒョンセジャ:소현세자)暗殺の謀逆事件にかかわって家が籍没され、賎民に落ちたという設定なのです。(仵作人の仵の字はりっしんべんの表記もある『忤』)

昭顕世子は第16代仁祖(インジョ:인조)の嫡男で、父から毒殺された悲運の世子として、とても有名な人物で、このエピソードも度々ドラマに登場します。イ・ビョンフン監督最新作馬医(マイ:마의)も、このエピソードから始まります。

2つのドラマは一世代ずれた時代が背景ですが、作家が同じキム・イヨンということで、発想の源泉が類似しているようです。馬医の主人公・白光炫(ペク・グァンヒョン:백광현)の家門も同じ憂き目にあっていますから。ちなみに昭顕世子の毒殺は1645年に起きています。

第一話の途中でトンイは泮村(パンチョン:반촌)に住んでいると明かします。泮村は成均館(ソンギュングァン:성균관)に隣接し成均館の運営を補助する特殊な村で、ドラマ成均館スキャンダル根の深い木(プリキプン ナム:뿌리깊은 나무)の舞台にもなっている場所です。

ここで設定の疑問点が浮上します。トンイの家門は反逆罪により公奴婢(コンノビ)になっているはずで、仵作人(オジャギン)という設定には無理があるような気がします。

仵作人(オジャギン)はその業務から死肉を扱うのですが、一般的に死肉を扱う身分は白丁(ペクチョン:백정)と呼ばれる奴婢よりも更に下に見られる身分層の者たちです。

現代でこそ検視官はIQ高めな専門職ですが、当時の感覚では最も低俗な仕事です。奴婢と白丁の間には明確な線引がされていますので、おそらくは白丁がこの業務を行なっていたものと思われます。

 

物語は1681年(粛宗7)の暗殺事件から始まります。これらももちろん架空の事件ですが、この設定もまた無理があります。

前年の1680年にこのドラマの男性主人公・朝鮮第19代王・粛宗(スクチョン:숙종)庚申換局(キョンシンファングク:경신환국)という第1回目の換局をやってのけます。換局とは政権を担う党派をそっくり入れ替えるという豪腕的手法なのですが、これにより政権党についたのは西人(ソイン:서인)です。

けれども、ドラマ内では南人(ナミン:남인)で要職についていた3人が殺害されます。大司憲(テサホン:대사헌)刑曹判書(ヒョンジョパンソ:형조참판)戸曹参判(ホジョチャムパン:호조참판)です。(放送では後者2つの役職までは訳されていません)

大司憲は文武百官の綱紀を監視する要職ですし、刑曹判書は今でいう警視総監です。この当時、これらの役職に南人が任官しているはずがありません。

 

テロップで党派の説明がありました。「南人(ナミン:남인)・・・朝鮮王朝時代の党派。(老論・小論・南人・西人)の一つ」と記載されていました。この説明はいささか不親切です。

当時の大きな括りでの党派間争いは西人(ソイン:서인)v.s.南人(ナミン:남인)です。そして、西人が老論(ノロン:노론)少論(ソロン:소론)に分裂しているので、この4つを並列に表すと、少々おかしなことになります。老少は分裂していても、最大の敵は南人です。

ドラマ内では老少の争いは端折られて描かれていませんので、西人v.s.南人の構図だけ覚えておくと事足ります。

ちなみに「朝鮮王朝時代」という言葉は韓国では一般的ではありません。朝鮮王朝(チョソンワンジョ:조선왕조)朝鮮時代(チョソンシデ:조선시대)とは言います。一般的にも歴史学的にも後者の朝鮮時代を使用します。韓国では「~時代」という熟語をよく使います。

今では日本でも一般的になった少女時代(ソニョシデ:소녀시대)も、日本人の感覚からは当初は不思議な熟語だったのではないでしょうか?けれども、韓国の感覚だとそうおかしな熟語ではないんです。

更に細くすると、日本で使用する「李氏朝鮮」「李朝」という表記を、韓国の学者は嫌がります。日本の学会でも未だに使用している学者がいますが、現地の学者が使用している分類呼称の「朝鮮時代」を使用したほうがいいと思います。

 

あらためてドラマ内の表現を見ると、奴婢(ノビ:노비)という単語はしっかりとそのまま訳されていました。王女の男21話 奴婢を使用人と訳すとは!?で指摘したように、王女の男(原題:公主の男:コンジュエ ナムジャ:공주의 남자)では訳が変な方向に行っていました。

同じ訳者なのに古い方のトンイではちゃんと訳しています。なぜ王女の男でこの表現を踏襲しなかったのでしょうね~?あ、奴婢(ぬひ)は日本語として律令時代から定着している言葉です。

衣装の違う兵団がありましたね。捕盗庁(ポドチョン:포도청)義禁府(ウィグムブ:의금부)です。前者は現代の警察にあたり、後者は公安に当たります。一般の事件を担当するのが捕盗庁で、謀反などの国の根幹を揺るがす事件は義禁府が取り扱います。

 

解説することはもうほとんど残ってないと思っていましたが、意外にも結構な文字数になりました。2話目以降はきっと少なくなると思いますが、また気付いたことがあれば解説していきます!

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