女官の初恋に5両!?朝鮮の貨幣事情 太陽を抱く月 第11話解説(あらすじ含む)
キム・スヒョン、ハン・ガイン主演韓国ドラマ、太陽を抱く月(ヘルル プムンタル:해를 품은 달)第11話の解説(あらすじ含む・ネタバレあり)です。
街でフォンに助けられたウォル。フォンは戸曹判書(ホジョパンソ)に食って掛かったことをたしなめていたが、ウォルは人形劇に目を奪われ馬耳東風。
かつてヨヌと一緒に見た人形劇ということもあり、フォンは呼び込みに誘われるがまま見ることにするが、手持ちの金がなく、5両をウォルに立て替えてもらうことになる。
吹き替え・字幕では『女官の初恋』となっていましたが、オリジナル音声では『ムスリの初恋』となっていました。感の良い方はすぐにわかると思いますが、この人形劇の題材はトンイに登場する粛宗(スクチョン:숙종)と淑嬪崔氏(スクビンチェシ:숙빈최씨)ですね!(もちろんこんな人形劇はありません)
さて、さらりと5両を払ったウォルですが、当時の貨幣価値からするととんでもなく高額な拝観料です。また、朝鮮は日本ほど貨幣経済が発達していなかったということにも注視しなければなりません。
それでは、朝鮮の貨幣流通と貨幣価値について簡単に見て行きましょう。
朝鮮時代の貨幣として有名なものには朝鮮通宝(チョソントンボ:조선통보)と常平通宝(サンピョントンボ:상평통보)の2種類があります。
朝鮮通宝(チョソントンボ)は第4代世宗(セジョン:세종)期の1425年(世宗7年)から1445年(世宗27年)のわずか20年間しか流通しませんでした。
というのも、この頃の朝鮮は流通市場が未成熟で物々交換の域を出ることもなく、材料の銅を日本からの輸出に頼っており、量の確保ができなかったためです。
常平通宝(サンピョントンボ)は第16代仁祖(インジョ:인조)の頃から鋳造され始めたものですが、本格的に流通し始めたのは第19代粛宗(スクチョン)期の1678年(粛宗4)からです。
この貨幣は定着し、以降200年もの間実用されます。けれど、朝廷が一元管理せず地方でも鋳造して流通させていたというザルのような金融政策だったため、信用度が万全とはいえないものでした。
さて、ウォルが払った5両ですが、どちらだったのでしょうか?
太陽を抱く月は架空の朝鮮なのでどちらかはわかりません。というよりも、他の条件から鑑みると、太陽を抱く月の時代背景は1500年前後の朝鮮ですので、そうなると貨幣は流通していないことになります。
では、5両の貨幣価値はいかほどだったのでしょうか?
以前、王女の男の解説の際にも『奴婢の値段は5~20両』『米1俵(80kg)が約1両』と記述しました。また、最近見た小学生用の国史(韓半島の歴史)の副読本にも、朝鮮後期で1両は約2万ウォンとありました。
けれど、1両=2万ウォンというのは米の重さベースで逆算しているようで、当時と今では米の価値が全く異なるため、実際には1両は数100万ウォン以上の価値があったのではないかと思われます。
※粛宗期の兵卒の給与から逆算した試算はこちらで見ることができます。→ 王女の男21話 奴婢を使用人と訳すとは!?
結局のところ時代によって貨幣価値は変わるので、ウォルが払った5両の価値を明確には断定出来ませんが、安く見積もっても日本円換算で数万円、年代が上れば上るほどもっと高価になり数十万円相当の価値になります。
きっとあの人形劇は超名人による興行だったに違いありません(笑)
といっても、朝鮮の芸人は最下層の者たちですので、実際にはそれもありえませんね!
第12話に続く
太陽を抱く月OST 時間に逆らって(シガヌル コスルロ:시간을 거슬러) リン(린:LYn)
月の光が沈む(タルビチ チゴ:달빛이 지고) ヘオラ(해오라:Heora)
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