王女の男 第9話 癸酉靖難(ケユジョンナン)後編
2012/11/26
王女の男(原題:公主の男:コンジュエ ナムジャ:공주의 남자)第9話。
首陽大君(スヤンデグン:수양대군)による政敵への大粛清・癸酉靖難(ケユジョンナン:계유정난)の最も残虐な行為が描写されました。
朝鮮王朝実録には、あたかも講談であるかのように細かく記述されています。
金宗瑞(キム・ジョンソ:김종서)襲撃と同時に、首陽は韓明澮(ハン・ミョンフェ:한명회)と権覧(クォン・ラム:권람)に大小の門をすべて管轄下に置きました。これは漢城府を掌握するときの常套手段で、外からの敵を流入させず、また、逆賊を外に逃さないためでもあります。また、府内を巡回する巡厅(スンチョン:순청)にも事情を話し、麾下に加えました。
そして、時座所(シジャソ:시좌소)となっていた敬惠公主(キョンヘコンジュ:경혜공주)宅へ向かいます。首陽はその日の入直承旨(イプジクスンジ:입직승지)だった崔恒(チェ・ハン:최항)の手を取りこう切り出します。
「皇甫仁(ファンボ・イン:황보인)、金宗瑞(キムジョンソ)、李穰(イ・ヤン:이양)、閔伸(ミン・シン:민신)、趙克寬(チョ・グックゥワン:조극관)、尹處恭(ユン・チョゴン:윤처공)、李命敏(イ・ミョンミン:이명민)、元矩(ウォン・グ:원구)、趙蕃(チョ・ボン:조번)たちが、安平大君(アンピョンデグン:안평대군)に頼み、咸吉道都節制使(ハムギルド トジョルジェサ:함길도 도절제사)李澄玉(イ・ジンオク:이징옥)、鏡城府使(キョンソンブサ:경성부사)李耕㽥(イ・ギョンユ:이경유)、平安道都觀察使(ピョンアンド トグァンチャルサ:평안도 도관찰사)趙遂良(チョ・スリョン:조수량)、忠淸都都觀察使(チュンチョンド トグァンチャルサ:충청도 도관찰사)安完慶(アン・ワンギョン:안완경)たちと通じ、謀反を共謀し決起の日まで決めたため、緊急を要し殿下(王のこと)にお伝えする時間に余裕がありません(でした)。すでに賊魁の金宗瑞(キムジョンソ)を討ち、残党を討伐しようとしている 」
と、言い、次に内侍の田畇(チョン・ギュン:전균)をつかまえ、
「皇甫仁(ファンボ・イン)、金宗瑞(キムジョンソ)などが安平大君(アンピョンデグン)から賄賂を受けて殿下が幼いことを軽く見て広く徒党を組み、地方勢力(藩鎭)と結託して謀反を図り、形勢が窮して事が切迫したうえに、未だ賊党がまわりにいるため、やむを得ず昔の人の先発後聞の故事に習い、すでに金宗瑞(キムジョンソ)を殺したが、皇甫仁(ファンボ・イン)などがまだいるので、今から処断することを求めるだろう。お前も早く入ってお伝えせよ。お前は当然、気を回して声を滑らかにして、ゆっくりと殿下に知らせ、軽動するでないぞ。」
と言い、王の世話をする者からも、事の次第を伝えさせる。
その後、都鎭撫・判中樞院事(トジンム パンジュンチュウォンサ:도진무 판중추원사)金孝誠(キム・ヒョソン:김효성)を首陽が息子の金處義(キム・チョウィ:김처의)を使って入直(宿直のこと)させ、兵曹參判(ピョンジョ チャムパン:병조 참판)李季甸(イ・ゲジョン:이계전)たちを呼び 入直承旨の崔恒(チェ・ハン)ほか、金孝誠(キム・ヒョソン)、李季甸(イ・ゲジョン)たちと相談します。
そして、 皇甫仁(ファンボ・イン)、李穰(イ・ヤン:이양)、趙克寬(チョ・グックゥワン)、左贊成(チャ・チャンソン:좌찬성)韓確(ハン・ファク:한확)、左參贊(チャ・チャムチャン:좌참찬)許詡(ホ・フ:허후)、右參贊(ウチャムチャン:우참찬)李思哲(イ・サチョル:이사철)、判中樞院事(パンjチュンチュウォンサ:판중추원사)鄭麟趾(チョン・インジ:정인지)、都承旨(トスンジ:도승지)朴仲孫(パク・ジュンソン:박중손)などの重臣を呼びました。
首陽は内禁衛(ネグミ)ほか軍権を掌握し、漢城府内のあらゆる場所を制圧します。
そして第三門を通じて内庭に重臣を呼び入れます。「この内は深く狭いので一人で入ってきてください」と重臣に伝えます。王命により呼ばれた重臣は政変があったことは知らされているものの、この次に何が起こるのかわかるものなどいませんでした。
一人、また一人と門をくぐります。そして、殺生簿に名が書かれていた皇甫仁(ファンボ・イン)、李穰(イ・ヤン:이양)、趙克寬(チョ・グックゥワン)は鉄槌で殴り殺されました。尹處恭(ユン・チョゴン:윤처공)、李命敏(イ・ミョンミン:이명민)、趙蕃(チョ・ボン:조번)、元矩(ウォン・グ:원구)には人を遣わし殺害しました。
また、三軍鎭撫(サムグンジンム:삼군진무)崔賜起(チェ・サギ:최사기)を送り、家にいた金衍(キム・ヨン:김연)を殺害させ、同じく徐遭(ソ・ジョ:서조)を送り閔伸(ミン・シン:민신)を碑石所で殺害し、誠寧大君(ソンニョンデグン:성녕대군)宅にいた瑢(ヨン:용:安平大君)も捕らえました。(後に江華島へ流刑)
金宗瑞(キム・ジョンソ)は絶命しておらず目を覚まします。元矩(ウォン・グ:원구)を連れ敦義門(トンウィムン:돈의문)へ赴き「夜、とある人に襲われ死にそうになったため、はやく議政府に告げて医員に薬を用意させ治療してくれるように。また、すぐに安平大君に告げて、内禁衛(ネグミ)を送ってくれ。 私が私を傷つけた者を捕らえるから。」と、告げるますが門番は取り合いません。
金宗瑞(キム・ジョンソ)は女服をかぶり、西小門(ソソムン:서소문)、崇禮門(スンネムン:숭례문)へも行きますが、どこも門前払いです。すでに首陽が門を制圧しているので仕方ありません。結局、次男の金承壁(キム・スンビョク:김승벽)の妻の家に隠れました。
翌朝、李命敏(イ・ミョンミン)もまた、再び目覚めて担架にのせられて逃亡しましたが、首陽の腹心・洪達孫(ホン・ダルソン:홍달손)へたれこみがあったため、護軍の朴悌緘(パク・ジェハム:박제함)を送ってこれを始末させました。
首陽は腹心の楊汀(ヤンジョン:양정)と義禁府鎮撫(ウィグンブ チンム:의금부 진무)李興商(イ・フンサン:이흥상)を、金承壁(キム・スンビョク)の妻の家に隠れている金宗瑞(キム・ジョンソ)へ送ります。「(傷ついた)私がどうやって歩いて行けるというのか?軺軒(チョホン:초헌)を持って来い」という金宗瑞(キム・ジョンソ)を引きずり出し斬り殺しました。※軺軒:一輪車のついた輿
すべての謀反人の首は晒され、道行く人は投石したり罵詈雑言を浴びせました。
以上が朝鮮王朝実録に記載されている美化された殺戮の内容です。一部は抜粋・意訳ですが、ほぼ記述に従って紹介しています。
癸酉靖難(ケユジョンナン)について3回に渡り述べてきましたが、ドラマの展開に即していくとまだ説明していないことがあるため、次回以降も続けて説明していきます。
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