光海 王になった男
2013/02/22
光海 王になった男(クァンヘ, ワンイデンナムジャ:광해, 왕이 된 남자)
本日、韓国で封切られるイ・ビョンホン、ハン・ヒョジュ主演の話題の韓国時代劇映画です。
イ・ビョンホンは今回が史劇初挑戦ですが、同じ事務所のハン・ヒョジュはトンイですっかりおなじみですね。今回は中殿(チュンジョン)役です。(また時代考証無視のカチェなし:汗)
第15代光海君(クァンヘグン:광해군:在位1608-1623)はその名が示す通り反正(パンジョン)により王位を追われました。朝鮮王で反正を受けた二人の王のうちの一人です。もう一人の第10代燕山君(ヨンサングン:연산군在位1494-1506)とともに、よくドラマの題材にもなっています。
光海 王になった男のコンセプトを話す前に朝鮮王朝実録(チョソンワンジョシルロク:조선왕조실록)について若干の説明を加えましょう。
実録の中でも特殊なものが日記と名のついたものなのですが、記録は残っているものの正しい王とは認められなかった2人の王については、正式に実録の名が付されていません。
光海君の御世の記録は光海君日記(クァンヘグンイルギ:광해군일기)として残されています。
光海君の生きた時代というのは朝鮮の歴史上最も波乱に満ちたものでした。1592年・1597年の秀吉の朝鮮出兵・壬辰倭乱(イムジンウェラン:임진왜란)・丁酉再乱( チョンユチェラン:정유재란)を経験し、1636年の清による朝鮮侵攻、丙子胡乱(ピョンジャホラン:병자호란)をも経験しました。
この2つの隣国からの侵略で朝鮮は壊滅的打撃を受けます。そんな国際情勢の中で世子であり王であった光海君は疑心暗鬼となり殺戮を繰り返しますが、一方で国難を乗り切るバランス感覚を持った人物として昨今では再評価されています。
この映画のサブ主演でもあるリュ・スンニョン演じる都承旨(トスンジ: 도승지)の許筠(ホ・ギュン:허균)も最終的に光海君に殺されてしまいます。彼は洪吉童(ホンギルドンジョン:홍길동전)の著者でもあり、先進的な考えを持った人でした(個人的に好きな人物)
さて、話を光海 王になった男のコンセプトに戻しましょう。この光海 王になった男は光海君の在位9年目の1616年2月28日の光海君日記にある「可諱之事, 勿出朝報。(숨겨야 될 일들은 조보에 내지 말라.)隠さねばならないことは朝報に出すな(載せるな)」という一文を元に、日記に王の行状が残っていない空白の15日間に何が起きたのかをフィクションで描いています。朝報とは承政院(スンジョンウォン:승정원)が発行するいわゆる官報です。
ストーリーのあらすじはイ・ビョンフン演じる光海君が暗殺を恐れ替え玉を用意するよう許筠(ホ・ギュン)に命じ、許筠が容姿が王に瓜二つで話芸も達者な賤民の芸人ハソンを連れてくることから始まります。彼は替え玉でありながら徐々に王としての言動を見せ始め、本来持つ優しさをも出していき、光海君とは別の姿を見せていくというものです。
それでは、光海君日記にはなぜ15日もの記録の欠落があったのでしょうか?
光海君が仁祖反正(インジョバンジョン:인조반정)により王位を追われた翌年1624年の正月、冤罪により謀反の罪を被せられた李适が起こした李适の乱(イ・グァルエナン:이괄의난)が起きました。
漢城府に侵入した反乱軍により都城は大混乱し、実録編纂の一次資料となる春秋館(チュンチュグァン:춘추관)が記録する時政記(シジョンギ:시정기)や現代でいう秘書日記の承政院日記(スンジョンウォンイルギ:승정원일기 )が散逸してしまったのです。そのため、光海君日記には欠落した箇所がかなりあります。
光海君日記には草稿として最初に体裁をまとめた中草本(チュンチョボン:중초본)と、清書に近い正草本(チョンチョボン:정초본)との2種類があります。草の字が入っていることからもわかるように、他の実録のように活字で製本したものではありません。
映画を見ていないので断定できませんが、両者ともに記録が長期間欠落している期間は光海7年7月です。中草本には光海7年7月の記録は7月2日のものしかありません。正草本にいたっては1月の記録しかないのです。これだと15日どころの話ではなく約1ヶ月になってしまいますが(汗)
このように、記録がないためにフィクションが入り込む余地があるのですが、実際のところは史料が散逸しているだけで、映画のようなことはありませんでした。
それはさておき、この光海 王になった男の前評判はとても高く、観客動員数が1000万人超えするのではないかとの声もあります。韓国人の5人に1人が見る超大ヒット作になるのか、気になるところです。
追記:さっきトレイラーを見ましたが、ものすごく面白そうです。釜山にでも行って見たい気分!
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