医書習読官は実在した官職なのか? 馬医15話
イ・ビョンフン監督が演出するチョ・スンウ(조승우)、イ・ヨウォン(이요원)主演韓国時代劇・歴史ドラマ馬医(マイ/ばい:마의)第15話の解説&感想(あらすじ・ネタバレ含む)です。
イ・ミョンファンの息子であるイ・ソンハが医書習読官となり、顕宗(ヒョンジョン:현종)に謁見しました。
この役職は実在したのでしょうか?
それよりもまず、どうしても突っ込まずに入られない翻訳がありました。
ちょうど、ソンハが顕宗(ヒョンジョン)に謁見しているシーンです。ソンハのことを紹介する重臣がこう言いました。
『実は、内医院(ネイウォン:내의원)のイ・ミョンファン院長の子息です』と。
院長?えっ?院長?
実際には提調(チェジョ:제조)と言っています。内医院も含めて各種官庁の最高官職をこう呼ぶのです。
いくら翻訳だからといっても『院長』は無いですよね。こうして意訳されると、『院長』と言う役職がさも実在したかのように曲解します。しかも、なんだかそのへんの中規模病院の医者のようなイメージですもん(汗)
医書習読官は実在した官職なのか?
さて、本題に戻ります。医書習読官(ウィソスプドクグァン:의서습독관)は実在しました。この習読官(スプドクグァン:습독관)の制度は医書にかぎらず、以下の部署などに設けられました。
- 承文院(スンムンウォン:승문원) 中国語関連
- 司譯院(サヨクウォン:사역원) 軍事関連
- 観象監(クァンサンガム:관상감) 天文・占い関連
- 訓錬院(훈련원:フンリョヌォン) 軍事関連
- 典醫監/典医監(チョンウィガム:전의감) 医療関連
1425年(世宗7)に観象監に習読官を置いたのが始まりで、その後徐々に拡大していきました。
習読官の役割は?
習読官の置かれた部署には、両班以外の多くの人々が職に従事しています。そのため、両班の知らないところで不正や陰謀が起きないとも限りませんでした。そのため、彼らを管理・監督・監視するために、習読官が設置されたのです。
特に外交に関わる中国語と、王族の命に関わる医書についての習読が重要とされていました。けれども、歴史が下るに連れて、できればこの職につきたくないという風潮が生まれ、ほとんどの習読官が他の役職と兼業していました。
なぜなら、いくら習読に修練しても、直接出世には関係無かったからです。
その点、ソンハはとても奇特なタイプです。彼は科挙でトップ合格の壮元(チャンウォン:장원)となっているため、いきなり従6品の品階をえるのですが、習読官は最高でも従6品が担う下級役職なので、壮元獲得者がつくような役職ではありませんでした。
承政院日記(スンジョンウォンイルギ:승정원일기)にはそれなりに登場するものの、朝鮮王朝実録を見ても、第15代仁祖(インジョ:인조)以降にはほとんどその名称が登場しません。
それだけ、朝鮮後期には重要な使命がありながらも、さほど重要視されなかった役職とも言えます。
【参考】 顕宗(ヒョンジョン:현종) 韓国歴史ヒストリア
第16話に続く
挿入曲 馬医OST たった一つ(オジク タン ハナ:오직 단 하나) ソヒャン(소향)
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