仁宣王后(インソンワンフ)の憂鬱 馬医20話
イ・ビョンフン監督が演出するチョ・スンウ(조승우)、イ・ヨウォン(이요원)主演韓国時代劇・歴史ドラマ馬医(マイ/ばい:마의)第20話の解説&感想(あらすじ・ネタバレ含む)です。
白光炫(ペク・クァンヒョン:백광현)の診断により一命を取り留めた顕宗(ヒョンジョン:현종)。
彼の功を讃え、クァンヒョンは恵民署(ヘミンソ:혜민서)を追い出されずに済むことになりました。
めでたしめでたしといったところで、コ・ジュマンが毒を盛られて波乱の展開に。いつも一難去ってまた一難です。
さて、今回は、顕宗(ヒョンジョン)の母・仁宣王后(インソンワンフ:인선왕후)をピックアップします。ドラマ内では大妃(テビ:대비)として登場しています。
仁宣王后は大妃ということからもわかるように、先代王で第17代孝宗(ヒョジョン:효종)の正室です。けれど、一般的な大妃が、世子嬪(セジャビン:세자빈)→中殿(チュンジョン:중전)→大妃と身分上昇するのに対し、彼女はそうなったわけではありません。
彼女は第16代仁祖(インジョ:인조)の嫁で、義兄夫婦とともに清で人質生活を送っています。その義兄こそが悲劇の世子・昭顕世子(ソヒョンセジャ:소현세자)です。そのため、本来は一王族の嫁でしかありませんでした。
そして、紆余曲折を経てドラマの描写のように大妃として王室の長老の座につきました。頂点に君臨するわけですから、さぞかし晴れやかな人生だったのでは?と思うでしょうが、彼女には彼女なりの憂鬱がありました。
仁宣王后(インソンワンフ)の憂鬱
この頃の朝鮮王朝の王権は著しく弱いものとなっており、顕宗(ヒョンジョン)は臣下から抑圧されていました。大妃が健在であるときは、それを跳ね返す権威と実力をも持ち合わせていることが多いのですが、彼女にはそうできない事情がありました。
それは、兄夫婦の悲劇を目の当たりにしていることです。
有力説では清にかぶれた昭顕世子(ソヒョンセジャ)を、仁祖(インジョ)自らの命により暗殺したと言われています。そして、兄嫁も甥もことごとく粛清されたのを、彼女は目の当たりにしています。
仁祖(インジョ)の命ではあっても、実行部隊は強権を持った臣下です。そのため、臣下に逆らえば王といえども息子の命が危ないということを、彼女は十分に理解していました。
もちろん、第10代燕山君(ヨンサングン:연산군)、第15代光海君(クァンヘグン:광해군)が反正(パンジョン:반정)により王位から蹴落とされたという王族の悲劇的記憶も当然持ち合わせていたでしょう。
また、その憂鬱にさらに拍車をかけたのが、息子がひとりしかいなかったということです。彼女は7人の子を設けていますが、顕宗以外は全て女子でした。そのため、息子が亡くなった場合には、傍系に王位が継承される可能性もあったのです。
さらに、顕宗がドラマの描写のように病弱だったということで、不安に拍車がかかったことでしょう。
ドラマ馬医ではあまり党派の話は出てきませんが、このころは西人(ソイン:서인)が強力な権勢を誇っていた時代です。そのため、いくら王族に長といえども、西人に絡まれて生きていくしか無い時代だったのです。
【参考】 顕宗(ヒョンジョン:현종) 韓国歴史ヒストリア
第21話に続く
挿入曲 馬医OST たった一つ(オジク タン ハナ:오직 단 하나) ソヒャン(소향)
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